Columnコラム
往診と訪問診療の違いとは?点数と歯科での扱いも解説

在宅での医療を検討し始めると、「往診と訪問診療は何が違うのか」「どちらのほうが費用は高いのか」といった点で、まず疑問を感じる方が多いでしょう。
一般的に、往診は患者さんやご家族の要望に応じて、必要なときに行う臨時の診療です。一方、訪問診療は、あらかじめ診療計画を立て、定期的・継続的に行う診療です。似た言葉ですが、制度上は別のものとして扱われています。
ただし、歯科では事情が異なります。歯科の診療報酬には「往診料」という独立した区分がなく、臨時の訪問も計画的な訪問もまとめて歯科訪問診療料として扱われます。
この記事では、往診と訪問診療の違いに加え、診療報酬の点数や自己負担額の考え方、歯科での扱いを整理します。
往診と訪問診療の違いを一覧表で比較

結論を先にまとめると、往診は「必要になったときの臨時の診療」、訪問診療は「計画に基づく定期的な診療」です。
| 比較項目 | 往診 | 訪問診療 |
|---|---|---|
| 特徴 | 必要に応じた臨時の診療 | 計画的・継続的な診療 |
| きっかけ | 患者さんやご家族などからの依頼 | あらかじめ立てた診療計画 |
| 訪問時期 | 症状や必要性に応じて | 事前に決めた日時 |
| 頻度 | 必要になったとき | 定期的 |
| 併用 | 訪問診療中に必要に応じて往診を受ける場合もある | 急変時などに往診が行われる場合がある |
▼往診は必要に応じて行う臨時の診療
往診は、次のような流れで行われます。
- ✓患者さんやご家族などから診療の要望がある
- ✓医師が往診の必要性を判断する
- ✓必要に応じて患者さんの自宅などへ赴いて診療する
ポイントは、要望があっても必ず往診になるわけではないことです。電話で症状を伝えたうえで、往診が必要かどうかを医師が判断します。状況によっては、受診を勧められたり、救急要請を案内されたりすることもあります。
「急に具合が悪くなったから、頼めば必ず来てもらえる」と考えていると、いざというときに対応が遅れるおそれがあります。かかりつけの医療機関がある場合は、急変時にどう連絡すればよいかを平時に確認しておくと安心です。
▼訪問診療は計画的・継続的な診療
訪問診療は、次のような性質を持ちます。
- ✓あらかじめ診療計画を立てる
- ✓定期的に患者さんの自宅などを訪問する
- ✓病状管理や慢性疾患の管理などを継続的に行う
- ✓訪問日時は事前に設定される
その都度依頼するのではなく、月2回などの頻度で定期的に訪問し、状態を継続的に確認します。次の訪問日が決まっているため、患者さんもご家族も予定を立てやすくなります。
▼訪問診療中に必要に応じて往診を受ける場合もある
往診と訪問診療は、どちらか一方を選ぶものではありません。
たとえば、次のような流れが実際に起こります。
- ✓定期的に訪問診療を受けている
- ✓訪問予定日とは別の日に病状が急変する
- ✓医師が往診の必要性を判断する
- ✓必要に応じて臨時に往診を行う
「訪問診療を利用していると往診は利用できない」という決まりはありません。継続的な管理を訪問診療で行い、急な変化には往診で対応する。この組み合わせが在宅医療の基本的な考え方です。
往診と訪問診療では点数・費用がどう違う?
費用の話に入る前に、前提を一つ確認します。診療報酬の「点数」は、患者さんが支払う金額そのものではありません。
診療報酬は原則として1点=10円で計算されます。この金額に自己負担割合を掛けたものが、実際に窓口で支払う金額の一部になります。
なお、この記事に記載する点数は令和8年度の診療報酬に基づくものです。
▼診療報酬の「点数」とは
具体例で説明します。
- ✓100点=診療報酬上は1,000円
- ✓1割負担なら、原則100円
- ✓3割負担なら、原則300円
という考え方です。
ただし、実際の支払額は一つの項目だけでは決まりません。診療内容、各種の加算、医学管理料などが積み上がって総額になります。「点数が高い項目があること」と「支払額が高いこと」を単純に結びつけないようにしてください。
▼往診料と在宅患者訪問診療料の違い
医科の診療報酬では、往診と訪問診療が別々の項目として設定されています。
| 項目 | 点数 | 診療報酬上の金額 | 1割負担の目安 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 往診料 | 720点 | 7,200円 | 720円 | 2,160円 |
| 在宅患者訪問診療料1(同一建物居住者以外) | 890点 | 8,900円 | 890円 | 2,670円 |
| 在宅患者訪問診療料1(同一建物居住者) | 215点 | 2,150円 | 215円 | 645円 |
この表だけを見ると、訪問診療料のほうが高いように見えます。しかし、往診料と訪問診療料の基本点数だけを比べて、どちらが必ず高い、安いと判断することはできません。
訪問診療では、基本点数のほかに在宅時医学総合管理料などの継続的な管理に関する費用が関係します。往診では、時間帯や緊急性に応じた加算が大きく影響します。比較するなら、1回の訪問にかかる総額で見る必要があります。
▼夜間・休日などは加算によって費用が変わる
実際の費用が基本点数だけで決まらない理由は、加算にあります。
- ✓緊急に対応した場合
- ✓夜間に対応した場合
- ✓深夜に対応した場合
- ✓休日に対応した場合
- ✓医療機関の施設基準による違い
- ✓その他の診療内容や医学管理
これらによって加算が発生します。往診の場合、加算は基本点数を上回る規模になることも一定程度見られます。たとえば深夜の往診では、条件によって基本点数の数倍にあたる加算が設定されています。
そのため、「往診は必ず訪問診療より高い」とも、「訪問診療は必ず往診より高い」とも言えません。受診した時間帯や医療機関の体制、診療内容によって異なります。
歯科では往診と訪問診療の扱いが異なる
ここまで説明した往診料と訪問診療料の違いは、主に医科の診療報酬における考え方です。歯科では制度上の扱いが異なります。
▼歯科には「往診料」という独立した区分がない
医科では、往診料と在宅患者訪問診療料が別々に設定されています。一方、歯科の診療報酬には「往診料」という独立した区分がありません。
歯科では、患者さんの要望に応じた臨時の訪問も、計画的・継続的な訪問も、まとめて歯科訪問診療料の枠組みで評価されます。
そのため、日常的に「歯医者の往診」「歯科往診」と呼ばれているケースでも、診療報酬上は歯科訪問診療として扱われます。ここは医科と歯科で仕組みが分かれている部分ですので、医科の往診のイメージをそのまま歯科に当てはめないよう注意してください。
▼歯科訪問診療料は訪問人数などによって区分される
歯科訪問診療料は、同じ建物で同じ日に何人の患者さんを診療するかによって、5つの区分に分かれています。
| 区分 | 同一建物で同日に診療する人数 | 点数 | 診療報酬上の金額 | 1割負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 歯科訪問診療1 | 1人 | 1,100点 | 11,000円 | 1,100円 |
| 歯科訪問診療2 | 2〜3人 | 410点 | 4,100円 | 410円 |
| 歯科訪問診療3 | 4〜9人 | 310点 | 3,100円 | 310円 |
| 歯科訪問診療4 | 10〜19人 | 160点 | 1,600円 | 160円 |
| 歯科訪問診療5 | 20人以上 | 95点 | 950円 | 95円 |
自宅で一人だけ診療する場合は歯科訪問診療1です。施設で複数人をまとめて診療する場合は、人数に応じた区分になります。表の金額は1点=10円として計算した単純換算例で、実際の支払額にはこれに治療費や管理・指導に関する費用が加わります。
なお、歯科訪問診療2から5では、診療時間が20分未満の場合に点数が下がる仕組みもあります。
▼緊急・夜間・深夜の訪問には加算が設けられている
歯科でも、緊急の歯科訪問診療、夜間の歯科訪問診療、深夜の歯科訪問診療などについて加算が設けられています。
整理すると、歯科では往診と訪問診療を別々の基本点数で区別するのではなく、緊急性や時間帯などを加算という形で評価する仕組みになっています。臨時の訪問も制度上想定されています。
ただし、制度上加算が存在することと、すべての歯科医院が当日・夜間・深夜に対応していることは別の話です。実際の対応方針は医院ごとに確認する必要があります。
関西訪問歯科センターでは、歯の痛みや入れ歯の破損など急なトラブルについて、可能な限り当日または翌日中に対応しています。
歯科訪問診療の利用方法や対応エリアについて詳しく知りたい方は、関西訪問歯科センターへお問い合わせください。
往診と訪問診療はどう使い分ける?
往診と訪問診療は、どちらを選ぶかという二者択一ではありません。患者さんの状態と診療の目的によって、使われ方が変わります。
▼急な症状がある場合
次のような状況では、往診が行われることがあります。
- ✓急な体調の変化がある
- ✓定期診療日まで待てない状態がある
- ✓患者さんやご家族などから診療を求める
- ✓医師が往診の必要性を判断する
希望すれば必ず往診してもらえるわけではありません。症状を伝えたうえで、医師が必要性を判断します。
▼継続的な在宅診療が必要な場合
次のような状況では、訪問診療が検討されます。
- ✓定期的な健康管理が必要
- ✓慢性疾患を継続的に管理する必要がある
- ✓通院が難しく、自宅などで計画的な診療を受ける必要がある
歯科についても考え方は同じです。通院が難しくなり、継続的な口腔管理が必要になった段階で訪問診療を検討します。歯科での具体的な内容は、訪問歯科の全体像を解説した記事をご覧ください。
往診と訪問診療についてよくある質問
Q.往診と訪問診療は併用できますか?
A.併用できます。訪問診療を受けている患者さんでも、病状の急変時などに医師が必要と判断すれば往診が行われる場合があります。どちらか一方しか選べない制度ではありません。
Q.往診と訪問診療はどちらが高いですか?
A.基本点数だけで単純に比較することはできません。実際の費用は、診療内容、時間帯、緊急性、各種の加算、医学管理料などによって変わります。特に往診では、夜間や深夜の加算が総額に大きく影響します。
Q.往診料の点数は自己負担額ではいくらですか?
A.診療報酬は原則として1点=10円で計算され、その金額に自己負担割合を掛けたものが支払額の一部になります。往診料は令和8年度で720点ですので、単純換算すると診療報酬上は7,200円、1割負担で720円、3割負担で2,160円が目安です。実際の支払額には、これに診療内容や加算が加わります。
Q.歯科にも往診はありますか?
A.「歯科往診」という言葉自体は一般的に使われています。ただし、歯科の診療報酬には医科のような独立した「往診料」はなく、歯科訪問診療料として扱われます。呼び方が違うだけで、受けられる診療内容が変わることはありません。
Q.夜間に往診を頼むと費用は高くなりますか?
A.夜間や深夜には加算が発生する場合があるため、通常の診療時間帯とは費用が異なる可能性があります。具体的な金額は、診療時間、医療機関の体制、診療内容によって変わりますので、事前に確認してください。
まとめ
往診と訪問診療の違いを整理します。
- ✓往診は必要に応じて行われる臨時の診療、訪問診療は計画的・継続的な診療
- ✓二者択一ではなく、訪問診療中に必要に応じて往診が行われる場合もある
- ✓医科では往診料と在宅患者訪問診療料が別々に設定されている
- ✓点数は自己負担額そのものではなく、1点=10円を基本に負担割合を踏まえて計算する
- ✓基本点数だけでどちらが高いとは判断できず、夜間・緊急などの加算で費用は変わる
- ✓歯科には独立した「往診料」はなく、歯科訪問診療料として扱われる
歯科の訪問診療について詳しく知りたい場合は、訪問歯科の全体像を解説した記事もあわせてご覧ください。対象になる方、受けられる治療、費用の目安をまとめています。
関西訪問歯科センターでは、大阪府・兵庫県・奈良県の広い範囲で訪問診療を行っています。対応エリアをご確認のうえ、お電話またはお問い合わせフォームからご相談ください。