Columnコラム
訪問歯科は誰が受けられる?対象になる人・ならない人を解説

「寝たきりでないと訪問歯科は利用できないのでは」「要介護認定がないから対象外だろう」「家族が車を出せるうちは頼めないはず」といった声をよく聞きます。
訪問歯科を調べた方の多くが、こうした思い込みから相談をためらってしまいます。実際には、どれも正確ではありません。
訪問歯科の対象は、疾病や傷病などによって歯科医院への通院が困難な方です。要介護度や年齢だけで機械的に決まるものではありません。患者さんの身体状況、認知機能、通院環境などを踏まえて、歯科医師が個別に判断します。
この記事では、対象になる主なケースと対象にならないケースを整理します。あわせて、判断に迷いやすい境界のケースや、要介護認定・ケアプランとの関係も解説します。読み終えたときに、ご家族が相談すべき状態かどうかの見当がつくはずです。
訪問歯科の対象は「通院が困難な方」

訪問歯科診療の対象は、疾病や傷病などによって歯科医院への通院が困難な方です。
「自宅で診てもらったほうが便利だから」という理由だけで利用できる制度ではありません。訪問歯科は保険診療で、通院が困難な方のために設けられた制度だからです。
一方で、「通院困難」は寝たきりかどうかだけで決まるものでもありません。ここを厳格に捉えすぎると、対象になる方まで諦めてしまいます。
▼要介護度だけで決まるものではない
対象になるかどうかは、次のような単一の条件だけでは決まりません。
- ✓要支援、要介護度
- ✓年齢
- ✓車椅子を使っているかどうか
要介護認定を受けていない方でも、疾病や傷病などで実際に通院が難しければ、対象となる可能性があります。一方で、要介護認定を受けていても問題なく外来を受診できる方は、対象にならないことがあります。
関西訪問歯科センターでも、要介護認定を受けていない方への訪問診療に対応しています。認定を待ってから相談する必要はありません。
▼最終的な対象可否は歯科医師が判断する
「自分は対象なのか」を、ご家族だけで判断しないようにしてください。
患者さんごとに、次の要素はすべて異なります。
- ✓身体状況
- ✓認知機能
- ✓基礎疾患
- ✓移動の可否
- ✓通院時の介助状況
これらを総合して、最終的には歯科医師が個別に判断します。判断材料を持っているのは歯科医師です。判断に迷われる場合は、ご相談いただければと思います。
訪問歯科の対象になる主なケース
対象になりやすい代表的なケースを、理由別に整理します。
▼寝たきり・車椅子など身体的に通院が難しい場合
- ✓寝たきりで外出が困難
- ✓車椅子を利用しており、移動の負担が大きい
- ✓身体障がいなどによって外出が難しい
- ✓疾病によって歩行や移動が困難
ここで大切なのは、車椅子を使っていること自体が条件ではないという点です。車椅子でも自力で外出でき、通院に大きな負担がない方もいます。判断されるのは、実際に通院が困難かどうかです。
▼認知症などで歯科医院での治療が難しい場合
身体的には移動できても、認知・精神面の理由で通院が難しいケースがあります。
- ✓認知症によって環境の変化に強い混乱が生じる
- ✓歯科医院という慣れない場所では治療を受けることが難しい
- ✓外出や診療そのものへの強い抵抗がある
「足腰は元気だから対象外だろう」と考えてしまいがちですが、対象になる場合もあります。むしろ、慣れた自宅の環境のほうが落ち着いて治療を受けられる方も多くいます。
関西訪問歯科センターでも、認知症などにより外来での診療が難しい方に対応しています。
▼医療的ケアなどにより外出が難しい場合
- ✓在宅酸素療法を受けている
- ✓胃ろうなどの医療的ケアを受けている
- ✓重い基礎疾患によって外出の負担が大きい
- ✓全身状態から頻繁な移動を避ける必要がある
こうした場合は、患者さんの全身状態を踏まえて判断されます。服薬内容や主治医の見解を確認したうえで診療を進めることもあります。
▼骨折・術後など一時的に外出が難しい場合
訪問歯科は、恒久的に寝たきりの方だけを対象とするものではありません。
- ✓骨折による安静期間
- ✓手術後で外出が難しい期間
- ✓一時的に身体機能が低下している状態
こうした場合でも、通院困難と判断されれば対象となる可能性があります。
関西訪問歯科センターでは、一時的に通院が難しい方の診療にも対応しています。通院できる状態まで回復された場合は、外来通院へ切り替えていただけます。数か月間に限って訪問診療をご利用いただくことも可能です。
訪問歯科の対象にならない主なケース
対象にならないケースについても、正直に整理しておきます。
- ✓自力で容易に歯科医院へ通院できる
- ✓通院困難と認められる疾病や傷病などがない
- ✓自宅で受けたいという利便性だけを理由に希望している
繰り返しになりますが、訪問歯科は通院が困難な患者さんのための保険診療です。
なお、患者さん自身は訪問歯科の対象であっても、治療内容によっては訪問先で対応できない場合があります。
- ✓全身麻酔が必要な治療
- ✓入院管理が必要な治療
- ✓大規模な外科処置
- ✓高度な設備が必要な一部の治療
これは「患者さんが対象外」という意味ではなく、その処置が訪問先では実施できないという別の問題です。この場合は、歯科医院や病院での治療をご提案します。
また、関西訪問歯科センターでは、摂食・嚥下機能そのものへの対応や、嚥下内視鏡検査(VE)には対応していません。飲み込みの機能について詳しく調べたい場合は、対応している医療機関へご相談ください。
訪問歯科の対象か判断に迷いやすいケース
ここからは、単純に対象・対象外と分けにくいケースを扱います。ご相談でも、最も多いのがこの領域です。
▼家族が送迎すれば通院できる場合
特に判断が分かれやすいのが、このケースです。
関西訪問歯科センターでは、ご家族の送迎が可能な場合は通院をご案内し、送迎が難しい場合に訪問する運用としています。これが基本方針です。
ただし、「送迎できる」の中身は家庭によってまったく異なります。
- ✓認知症によって車への乗り降りや外来受診が難しい
- ✓車椅子からの移乗に大きな介助が必要
- ✓全身状態から外出の負担が大きい
- ✓通院そのものが患者さんに強い身体的負担となる
形式上は車に乗せられても、実際には通院が成立しないケースもあります。通院が困難かどうかは歯科医師が個別に判断しますので、送迎の可否だけで自己判断せず、状況をお伝えのうえご相談ください。
▼身体は元気でも認知症などで診療が難しい場合
歩行や移動そのものは問題なくても、認知症などによって歯科医院での診療が成立しない場合があります。
例えば、診療台に座り続けられない、口を開けた状態を保てない、器具の音や光に強く反応してしまう、といった状況です。この場合、身体機能だけで対象可否を判断することはできません。
▼要介護認定を受けていない場合
要介護認定は、訪問歯科を受けるための必須条件ではありません。
疾病や傷病などによって通院が困難であれば、医療保険による訪問歯科の対象となる可能性があります。訪問歯科を利用するためだけに、先に介護認定を取得する必要はありません。
介護保険が関係する場面については、訪問歯科の医療保険と介護保険の違いを解説した記事で詳しく整理しています。
▼一時的に通院できない場合
骨折や術後など、一時的な事情で外来受診が困難な場合も個別の判断となります。「長期間寝たきりでなければ利用できない」という誤解は、ここで解消しておいてください。
対象になるか分からない方こそ、一度ご相談ください。訪問歯科の対象となるかどうかは、患者さんの状態を伺ったうえで歯科医師が判断します。
訪問歯科に年齢制限はある?
訪問歯科は、年齢だけを理由に対象外になる制度ではありません。
利用者に高齢の方が多いのは事実ですが、判断基準はあくまで「通院が困難かどうか」です。
小児の方や障がいのあるお子さんについても、通院が困難と判断されれば対象となります。関西訪問歯科センターでは、小児や障がいのある方への訪問診療に対応しています。
ただし、実際に対応できる内容は患者さんの状態によって異なります。まずは現在の状況をお伝えのうえ、ご相談ください。
要介護認定やケアプランは必要?
▼要介護認定がなくても利用できる場合がある
訪問歯科の対象可否は、要介護認定の有無だけでは決まりません。
通院困難と判断されれば、要介護・要支援認定を受けていない方でも、医療保険による訪問歯科を受けられる可能性があります。
▼ケアマネジャーを通さず相談できる場合もある
訪問歯科の相談ルートは複数あります。
- ✓ケアマネジャー
- ✓地域包括支援センター
- ✓主治医や病院の医療ソーシャルワーカー
- ✓訪問歯科を行う歯科医院
関西訪問歯科センターでは、患者さんやご家族からの直接のご相談を受け付けています。受付後は、当センターから担当のケアマネジャーへ連絡します。ご家族が事前に調整する必要はありません。
ケアプランや居宅療養管理指導の実務的な取り扱いについては、歯科の居宅療養管理指導を解説した記事で詳しく整理しています。
訪問歯科を受けられる場所にも条件がある
患者さん自身が訪問歯科の対象であっても、どこでも診療を受けられるわけではありません。
訪問先として想定されているのは、患者さんが療養している生活の場です。
- ✓自宅
- ✓有料老人ホーム
- ✓サービス付き高齢者向け住宅
- ✓グループホーム
- ✓特別養護老人ホーム
- ✓介護老人保健施設
- ✓入院中の病院
ただし、デイサービスやデイケアなどの通所施設は、原則として訪問歯科診療の対象となる場所には該当しません。通所施設は生活の場ではなく、日中に通う場所と位置づけられているためです。
また、保険診療として訪問できる範囲は、原則として医療機関から16km以内とされています。訪問歯科を行っている医院であっても、距離が離れていれば対応できません。
関西訪問歯科センターでは、大阪府・兵庫県・奈良県の広い範囲で訪問診療を行っています。詳しい対応市区町村は対応エリアページでご確認ください。
訪問歯科の対象かどうか確認する方法
ご自身やご家族が対象か判断できない場合の相談先を整理します。
- ✓訪問歯科を行っている歯科医院
- ✓担当のケアマネジャー
- ✓地域包括支援センター
- ✓主治医や病院の医療ソーシャルワーカー
問い合わせの際は、次の内容をお伝えいただくと判断がスムーズです。
- ✓現在困っている症状
- ✓通院が難しい理由
- ✓患者さんの身体状況
- ✓認知症などの有無
- ✓要介護度
- ✓現在の療養場所
- ✓住所
対象かどうか分からない状態で相談していただいて、問題ございません。判断のためにも、ご相談いただければと存じます。
訪問歯科の対象者についてよくある質問
Q.家族が送迎できる場合は対象外ですか?
A.関西訪問歯科センターでは、ご家族の送迎が可能な場合は通院をご案内し、送迎が難しい場合にご訪問しています。ただし、送迎できるという事実だけで一律に判断されるものではありません。認知症の有無、全身状態、介助の負担なども含めて、歯科医師が個別に判断します。
Q.要介護認定がなくても利用できますか?
A.利用できる可能性があります。要介護認定は必須条件ではありません。疾病や傷病などによって通院が困難であれば、訪問歯科の対象となります。
Q.認知症でも訪問歯科を受けられますか?
A.受けられます。認知症によって外来受診や歯科医院での診療が難しい場合も、訪問歯科の対象となります。関西訪問歯科センターでも対応しています。
Q.骨折など一時的な状態でも利用できますか?
A.利用できます。骨折や術後などで一時的に通院が困難な場合も対象となります。通院できる状態まで回復された場合は、外来通院へ切り替えていただけます。
Q.若い人でも訪問歯科を利用できますか?
A.年齢だけで対象外になることはありません。通院が困難な状態かどうかが判断基準です。小児や障がいのある方についても、関西訪問歯科センターでは対応しています。
Q.デイサービスに訪問してもらえますか?
A.デイサービスやデイケアなどの通所施設は、原則として訪問歯科診療の対象となる場所ではありません。ご自宅や入居されている施設など、療養されている場所での診療をご検討ください。
まとめ
訪問歯科の対象について、要点を整理します。
- ✓対象は、疾病や傷病などによって歯科医院への通院が困難な方
- ✓要介護度や年齢だけで対象可否が決まるものではない
- ✓寝たきりや車椅子だけでなく、認知症、医療的ケア、一時的な骨折・術後も対象となる可能性がある
- ✓要介護認定は必須条件ではない
- ✓家族の送迎がある場合は原則として通院となるが、状況によって判断は変わる
- ✓自力で容易に外来受診できる場合は、原則として対象にならない
- ✓デイサービスなどの通所施設では原則として訪問診療を受けられない
- ✓対象可否は患者さんの状態を踏まえて歯科医師が個別に判断する
対象かどうか分からないまま時間が経つと、その間に症状が進み、治療の負担も大きくなります。判断に迷う段階でご相談いただくのが最も確実です。
関西訪問歯科センターでは、大阪府・兵庫県・奈良県の広い範囲で訪問診療を行っています。対応エリアをご確認のうえ、お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。現在のご状況を伺い、訪問の対象になるかどうかをご案内します。