Columnコラム
車椅子・寝たきりの方の歯科治療 障害者歯科と訪問歯科の選び方
車椅子を使っている、寝たきりの状態にあるという場合、歯科治療をどこに相談すればよいか迷うことがあります。相談先は、歯科医院まで通えるかどうかだけでなく、診療のときにどのような配慮が必要かによっても変わります。
この記事では、バリアフリー対応の歯科医院、障害者歯科、訪問歯科という3つの相談先を整理し、それぞれをどう探し、予約前に何を伝えればよいかを説明します。受診を断られるのではないかと不安に感じている場合も、状態を先に伝えておくことで相談を進めやすくなります。
状態に合わせて歯科治療の相談先を考える
相談先を考えるときは、通院できるかどうかと、診療のときにどのような配慮が必要かの2つを分けて整理すると判断しやすくなります。
| 状況の目安 | 相談先の候補 | 予約前に確認したいこと |
|---|---|---|
| 通院はできるが、移動に配慮が必要 | バリアフリー対応の歯科医院 | 段差の有無、院内の動線、診療台への移乗、介助の体制 |
| 診療のときに専門的な配慮が必要 | 障害者歯科を扱う医療機関 | 本人の状態への対応、設備、予約の方法 |
| 病気や障がいなどで通院が困難 | 訪問歯科 | 通院の状況、訪問できる地域、対応している診療内容 |
障害者歯科は、専門的な配慮を伴う診療を行う分野を指します。一方で訪問歯科は、通院が難しい方のもとへ出向いて診療を行う方法です。分野と方法という異なる区分であり、同じ制度ではありません。
この2つは重なる場合もあります。専門的な配慮が必要で、なおかつ通院も難しいという状況はあり得ます。どちらか一方を選ばなければならないというものではなく、本人の状態に合う相談先を探していくことになります。
車椅子で通院する場合に確認したいこと
車椅子を使っていても、歯科医院に通院して治療を受けている方はいます。通院を検討する場合は、院内での移動と、診療のときの姿勢について、予約の前に確認しておくと当日の負担が減ります。
▼入口から診療室までの移動と診療時の姿勢
サイトにバリアフリー対応と書かれていても、実際にどこまで対応しているかは医院によって異なります。次の点を電話などで確認してみてください。
- ✓入口や院内に段差があるか、スロープがあるか
- ✓建物にエレベーターがあるか(2階以上の場合)
- ✓待合室から診療室までの通路の幅
- ✓使用している車椅子の幅や全長で通れるか
- ✓診療台へ移乗する必要があるか、車椅子のまま診療できるか
車椅子のまま診療できるかどうかは、医院の設備と、行う処置の内容の両方によって決まります。どの医院でも車椅子のまま治療を受けられるわけではありません。
使っている車椅子の寸法や、リクライニングの可否を伝えておくと、医院側も対応を判断しやすくなります。
▼付き添いと介助の範囲
付き添いについても、事前に共有しておきたいことがあります。
- ✓当日は何人で行くか
- ✓本人が苦手な動作や姿勢はあるか
- ✓普段どのように介助しているか
- ✓移乗が必要な場合、家族が介助するのか、医院のスタッフに手伝ってもらう必要があるのか
医院が送迎を行っているか、移乗の介助にどこまで対応できるかは、医院ごとに異なります。当然に対応してもらえるものと考えず、個別に確認してください。
専門的な配慮が必要な場合は障害者歯科を相談する
診療のときに専門的な配慮が必要な場合は、障害者歯科を扱う医療機関が相談先の候補になります。ここで大切なのは、診断名だけで一般の歯科医院を受診できないと決めつけないことです。実際に必要な配慮が何かという観点から、相談先を考えてください。
▼障害者歯科で相談できるケース
たとえば、次のような場合に相談の対象となることがあります。
- ✓障がいがあり、通常の診療の進め方では治療が難しい
- ✓認知症があり、診療の場で落ち着いて過ごすことが難しい
- ✓不安や恐怖が強く、一般の歯科医院での治療が続けられなかった
- ✓嘔吐反射が強く、口の中に器具を入れることが難しい
- ✓体を安定させた姿勢を保つことが難しい
ただし、対応できる範囲や設備は医療機関ごとに異なります。鎮静を用いた方法や全身麻酔下での治療に対応しているかどうかも、医療機関によって違います。希望する方法で必ず受診できるとは限らないため、事前に問い合わせて確認してください。
▼一覧や相談窓口を使って探す方法
障害者歯科を扱う医療機関を探す方法として、次のものがあります。
- ✓日本障害者歯科学会が公開している、認定医と臨床経験施設の一覧で、都道府県と対応分野を確認する
- ✓お住まいの地域の歯科医師会に問い合わせる
- ✓自治体の障がい福祉に関する相談窓口に問い合わせる
- ✓主治医やかかりつけの医療機関、担当の支援者に相談する
一覧に掲載されている医療機関であっても、すべての状態に対応できるとは限りません。連絡したうえで、本人の状態、希望する治療、予約の条件を伝えて相談してください。
また、地域によっては近くに該当する医療機関がない場合もあります。その場合は、通院そのものが負担にならないかという観点も含めて検討することになります。
通院そのものが難しい場合は訪問歯科を相談する
通院すること自体が難しい場合は、訪問歯科が相談先になります。歯科医師とスタッフが自宅や施設へ伺い、その場で診療を行う方法です。ここからは、たんぽぽ歯科訪問センターの対応内容をもとに説明します。
▼訪問歯科の対象になり得るケース
たんぽぽ歯科訪問センターでは、次のような方からのご相談に対応しています。
- ✓要介護認定を受けていない方
- ✓認知症などにより、外来での診療を受けることが難しい方
- ✓骨折や手術後など、一時的に通院が難しくなっている方
- ✓小児の方、障がいのある方
ご家族が送迎できる場合は通院していただき、送迎が難しい場合に訪問するというのが当センターの基本的な考え方です。ただし、送迎が難しいという事情だけで訪問診療の対象が決まるわけではありません。ご本人が通院そのものを負担なく行える状態かどうかも含めて確認します。
骨折や術後のように一時的に通院が難しい場合は、回復して通院できる状態になった後、外来通院へ切り替えていただきます。対象となる方の条件については、訪問歯科の対象者についてまとめた記事で詳しく整理しています。
▼寝たきりの方の歯科治療と口腔ケア
寝たきりの状態にある方の場合、口の中の状態が見えにくく、家族が気づいたときには入れ歯が合わなくなっていた、歯が欠けていたということがあります。痛みを訴えることが難しい方であれば、食事量が減った、特定のものを避けるようになったといった変化が手がかりになることもあります。
たんぽぽ歯科訪問センターでは、訪問先で次の診療に対応しています。
- ✓虫歯の治療
- ✓歯周病の治療
- ✓入れ歯の作成・修理・調整
- ✓抜歯
- ✓レントゲン撮影
日々の口腔ケアの方法については、口の中の状態や体の状態によって適した進め方が異なります。姿勢や使う道具、水の使い方などを一律に決められるものではありません。実際にどう行うかは、状態を診たうえで指導を受けてください。
▼飲み込みの相談と訪問依頼の流れ
飲み込みに不安がある場合について、あらかじめお伝えしておきたいことがあります。たんぽぽ歯科訪問センターでは、摂食・嚥下機能への対応と嚥下内視鏡検査は行っていません。飲み込みの機能そのものの評価や訓練をご希望の場合は、主治医やケアマネジャーへご相談ください。
歯や入れ歯の状態、口の中のケアについての相談は、当センターで対応しています。飲み込みに関する相談とは分けて考えていただく必要があります。
お申し込みは、ご本人やご家族から直接いただけます。ケアマネジャーを通す必要はありません。受付の後、センターからケアマネジャーへ連絡し、必要な情報を共有します。
対応地域は大阪府・兵庫県・奈良県の一部です。同じ市内でも住所によって対応可否が分かれる場合がありますので、お問い合わせの際は番地までの住所をお伝えください。
通院が難しい状況や希望する歯科治療についてご相談ください。
よくある質問
Q.車椅子を使っていれば訪問歯科を利用できますか?
A.車椅子を使っているかどうかだけで決まるものではありません。ご本人がどのくらい通院しにくい状況にあるか、ご家族の送迎が可能かといった点をあわせて確認します。車椅子を使いながら通院されている方もいます。
Q.障害者歯科と訪問歯科は同じですか?
A.異なります。障害者歯科は専門的な配慮を伴う診療を行う分野を指し、訪問歯科は通院が難しい方のもとへ出向いて診療する方法です。必要な配慮と、通院できるかどうかの両方から相談先を検討してください。
Q.寝たきりの家族の飲み込みも診てもらえますか?
A.歯や入れ歯の治療、口の中のケアについてはご相談いただけますが、飲み込みの機能そのものの評価や訓練はたんぽぽ歯科訪問センターでは行っていません。嚥下内視鏡検査にも対応していません。飲み込みについては主治医やケアマネジャーへご相談ください。
まとめ
歯科治療の相談先は、通院できるかどうかと、診療のときにどのような配慮が必要かによって変わります。通院できるが移動に配慮が必要ならバリアフリー対応の歯科医院、専門的な配慮が必要なら障害者歯科を扱う医療機関、通院そのものが難しいなら訪問歯科が候補になります。
いずれの場合も、本人の状態と必要な配慮を整理したうえで、予約の前に伝えておくことが相談を進めやすくします。訪問歯科の対象になるかどうか迷う場合は、通院の状況を含めてご相談ください。