Columnコラム
訪問歯科の医療保険と介護保険の違い 使わない場合はどうなる?

「訪問歯科では医療保険と介護保険のどちらが適用されるのか」「要介護認定がない場合はどうなるのか」「介護保険を利用せずに訪問歯科を受けられるのか」などの疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
保険の話が出てくると、検討が進まなくなる方は多いはずです。制度が2つあり、しかもどちらが適用されるかが状況によって変わるのですから、無理もありません。
先に整理しておきます。訪問歯科では、歯科診療や治療には医療保険が使われます。また、要介護・要支援認定を受けた方が居宅で療養上の管理・指導を受ける場合は、介護保険が関係します。
つまり、要介護認定がなくても、疾病や傷病などによって通院が困難であれば訪問歯科を受けられる可能性があります。要介護認定を待つ必要はありません。
この記事では、2つの保険の違い、どちらが使われるのか、介護保険を使わない場合・使えない場合の扱い、二重請求にならない理由まで解説します。
訪問歯科は要介護認定がなくても受けられる

まず、最も誤解されやすい点から確認します。
訪問歯科の対象となる基本的な条件は、要介護認定の有無ではありません。疾病や傷病などによって歯科医院への通院が困難であることです。
そのため、次のような場合でも、対象条件を満たせば医療保険を使って診療を受けられる可能性があります。
- ✓要介護・要支援認定を受けていない
- ✓介護サービスを利用していない
- ✓介護認定を申請していない
「訪問歯科を利用するために介護認定を受けなければならない」という決まりはありません。認定の結果が出るまで数十日かかることもありますが、その間、歯の痛みを我慢する必要はないということです。
関西訪問歯科センターでも、要介護認定を受けていない方への訪問診療に対応しています。
最終的に訪問歯科の対象となるかどうかは、患者さんの状態を踏まえて歯科医師が判断します。
要介護認定の有無にかかわらず、通院が難しい方はまずご相談ください。対象になるかどうかの判断からお手伝いします。
訪問歯科の医療保険と介護保険は何が違う?
2つの保険は、訪問歯科のなかで同じ役割を果たしているわけではありません。担当している部分が違います。
| 比較項目 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 歯科診療・治療・医療上の管理 | 居宅での療養上の管理・指導 |
| 訪問歯科での主な例 | 歯科訪問診療料、虫歯・歯周病・入れ歯治療、歯科疾患在宅療養管理料など | 居宅療養管理指導 |
| 計算方法 | 診療報酬の「点数」 | 介護報酬の「単位」 |
| 主な対象 | 訪問歯科の対象となる患者 | 要介護・要支援認定等の条件を満たす方 |
▼医療保険は歯科診療・治療などに使われる
医療保険では、主に次の費用が算定されます。
- ✓歯科医師が自宅や施設などを訪問して診療する費用
- ✓虫歯の治療
- ✓歯周病の治療
- ✓抜歯
- ✓入れ歯の作製、修理、調整
- ✓レントゲン撮影などの必要な検査
- ✓医療保険上の管理・指導
歯を治すという行為そのものは、訪問であっても医療保険の対象です。「訪問歯科は介護保険のサービス」という理解は正確ではありません。
具体的な料金や歯科訪問診療料の点数については、訪問歯科の費用を解説した記事で詳しく整理しています。
▼介護保険は居宅での管理・指導に使われる
介護保険では、条件を満たす方に対して居宅療養管理指導が算定される場合があります。内容は次のとおりです。
- ✓歯科医師による療養上の管理・指導
- ✓歯科衛生士等による口腔ケアの実地指導
- ✓ご家族や介護者の方への助言
- ✓ケアマネジャーへの必要な情報提供
治療そのものではなく、生活のなかで口腔を管理していくための助言や指導が中心です。
ここでも、「要介護認定を受けると訪問歯科のすべてが介護保険になる」わけではない点に注意してください。治療は医療保険、管理・指導は介護保険という役割分担は変わりません。
どちらの保険が使われる?訪問先と認定の有無で確認
治療そのものには、どのケースでも医療保険が使われます。違いが生じやすいのは管理・指導の部分です。
訪問先と要介護・要支援認定の有無を組み合わせると、次のように整理できます。
| 訪問先 | 要介護・要支援認定 | 管理・指導で主に関係する保険 |
|---|---|---|
| 自宅 | あり | 介護保険(居宅療養管理指導) |
| 自宅 | なし | 医療保険 |
| 有料老人ホーム・サ高住・グループホーム | あり | 介護保険(居宅療養管理指導) |
| 有料老人ホーム・サ高住・グループホーム | なし | 医療保険 |
| 特別養護老人ホーム | あり・なしを問わず | 医療保険上の項目が関係する場合がある |
| 介護老人保健施設 | あり・なしを問わず | 医療保険上の項目が関係する場合がある |
| 病院(入院中) | あり・なしを問わず | 医療保険上の項目が関係する場合がある |
この表はあくまで目安です。施設の種別や患者さんの状態、施設側の体制によって取扱いが変わる場合があります。本表のみで判断せず、実際の適用については歯科医院へご確認ください。
介護保険を使わない・使えない場合はどうなる?
「介護保険が使えない=訪問歯科を受けられない」ではありません。ここを誤解して相談を控えてしまう方が少なくないため、詳しく説明します。
▼要介護・要支援認定がない場合
認定がない場合でも、訪問歯科の対象条件を満たしていれば、医療保険による診療を受けられます。
管理・指導についても、患者さんの状況や訪問先に応じて医療保険上の項目が算定される場合があります。たとえば次のような項目です。
- ✓歯科疾患在宅療養管理料
- ✓訪問歯科衛生指導料
つまり、介護保険が使えないからといって、口腔管理や口腔ケアの指導が受けられなくなるわけではありません。介護保険を利用するために訪問歯科の開始を遅らせる必要はない、と考えてください。
▼特養・老健・病院などの場合
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、病院などでは、自宅や一部の居住系施設とは介護保険上の扱いが異なります。これらの施設には、施設側の医療・介護体制が組み込まれているためです。
その場合でも、次の内容については医療保険上の制度が用意されている場合があります。
- ✓歯科診療
- ✓歯科医学的な管理
- ✓歯科衛生士等による指導
「介護保険が使われない=歯科診療や口腔ケアを受けられない」という意味ではありません。施設に入居されている場合は、施設職員や担当者を通じて確認するとスムーズです。
▼居宅療養管理指導は介護保険の限度額とは別枠
居宅療養管理指導は、区分支給限度基準額の対象外です。
言い換えると、デイサービスや訪問介護などで利用する介護保険の限度額とは別枠です。他の介護サービスをどれだけ利用していても、居宅療養管理指導によって同じ限度額を消費することはありません。
ただし、居宅療養管理指導そのものの自己負担がなくなるわけではありません。限度額の枠を使わないだけで、自己負担割合に応じた費用は発生します。
「限度額がいっぱいだから訪問歯科は使えない」という誤解は、ここで解消してください。
医療保険と介護保険が両方かかるのは二重請求?
同じ月に医療保険と介護保険の両方から請求が来ると、「同じサービスに二重で払っているのでは」と不安になる方がいます。
そうではありません。それぞれ別のサービスに対して、別の保険が適用されているためです。
- ✓歯科治療や歯科訪問診療 → 医療保険
- ✓居宅での療養上の管理・指導 → 介護保険
このように、対象となっている内容が異なります。一方で、同じ管理・指導の内容について医療保険と介護保険を重複して算定することはありません。制度上、そうした重複は認められていません。
医療保険と介護保険は別の制度であるため、明細や請求書が分かれて届く場合があります。2通届いたからといって、同じ診療に二重で支払っているわけではないとご理解ください。
内訳が分かりにくい場合は、遠慮なく歯科医院へお尋ねください。どの費用がどちらの保険によるものかをご説明します。
訪問歯科の医療保険・介護保険についてよくある質問
Q.要介護認定がなくても訪問歯科を受けられますか?
A.受けられる可能性があります。要介護認定がなくても、疾病や傷病などによって通院が困難で訪問歯科の対象となれば、医療保険で診療を受けられます。認定の結果を待つ必要はありません。
Q.介護保険を使わないと費用は高くなりますか?
A.一概には言えません。適用される診療報酬、訪問先、負担割合、管理・指導の内容によって費用は変わります。具体的な金額の目安は、訪問歯科の費用を解説した記事をご覧ください。
Q.訪問歯科は介護保険の限度額を使いますか?
A.使いません。居宅療養管理指導は区分支給限度基準額の対象外です。訪問介護やデイサービスなどの限度額とは別枠ですが、居宅療養管理指導自体の自己負担は発生します。
Q.特別養護老人ホームで介護保険は使えますか?
A.特別養護老人ホームでは、自宅や一部の居住系施設と同じ居宅療養管理指導の扱いにはなりません。歯科診療や管理・指導には医療保険上の項目が関係する場合があります。詳しい取り扱いは、施設または歯科医院へご確認ください。
Q.医療保険と介護保険は両方請求されますか?
A.異なるサービスに対してそれぞれの保険が適用されるため、同じ月に両方の自己負担が発生するケースがあります。ただし、同じサービスを二重に請求するものではありません。
Q.介護認定を申請中でも訪問歯科を受けられますか?
A.受けられる可能性があります。認定の結果を待たなくても、訪問歯科の対象条件を満たす場合は医療保険で診療を開始できます。認定後の保険の取り扱いについては、個別にご確認ください。
まとめ
訪問歯科における医療保険と介護保険の違いを整理します。
- ✓訪問歯科は医療保険が基本で、要介護認定がなくても対象条件を満たせば受診できる可能性がある
- ✓歯科診療や治療には医療保険、居宅での療養上の管理・指導には条件に応じて介護保険が関係する
- ✓どちらの保険が管理・指導に使われるかは、認定の有無と訪問先によって異なる
- ✓介護保険を使わない、使えない場合でも、医療保険で管理・指導を受けられる場合がある
- ✓居宅療養管理指導は介護保険の区分支給限度基準額とは別枠
- ✓医療保険と介護保険の両方が関係しても、同じサービスを二重に請求するものではない
制度の整理は歯科医院側で行います。患者さんやご家族が保険の仕組みを完全に理解してから相談する必要はありません。
関西訪問歯科センターでは、大阪府・兵庫県・奈良県の広い範囲で訪問診療を行っています。対応エリアをご確認のうえ、お電話またはお問い合わせフォームからご相談ください。