Columnコラム
歯科の往診とは?急な歯の痛みへの対応と依頼方法を解説

「歯が痛いけれど、本人を歯医者へ連れて行けない」「入れ歯が割れて食事ができない」。こうした状況で、歯医者に往診を頼めるのかを調べ始める方は少なくありません。
結論から言えば、頼めます。ただし歯科では、診療報酬に「往診料」という独立した区分がありません。臨時の訪問も計画的な訪問も、まとめて歯科訪問診療料の枠組みで扱われます。そのため「歯科往診」と検索しても「歯科訪問診療」と検索しても、探すことになるのは同じ、歯科訪問診療を行っている歯科医院です。
呼び方はどちらでも構いません。「往診をお願いしたい」とそのままお伝えいただければ受付できます。
歯医者に往診は頼めるのか

頼めます。訪問での歯科診療を行っている医院なら、定期的な訪問だけでなく、急に痛みが出たときの臨時の訪問も対応の範囲です。
ただ、医科と歯科では制度の作りが違います。医科では、急な求めに応じて駆けつけた場合が往診料、計画を立てて定期的に伺う場合が在宅患者訪問診療料と、別々の項目に分かれています。歯科にはこの区分がありません。臨時に伺っても、月2回の予定で伺っても、どちらも歯科訪問診療料として扱われます。
そのため「歯科往診」で検索した方も「歯科訪問診療」で検索した方も、行き着く先は同じ医院です。医院側のページは「訪問歯科」と書かれていることが多いので、探すときはこの言葉も入れてみてください。
急な歯の痛みに当日来てもらうことはできる?
訪問での歯科診療は定期的なものというイメージが強いため、「急なときは対象外ではないか」と考えられがちです。実際はそうとは限りません。
▼緊急の歯科訪問診療も制度上は想定されている
歯科訪問診療は、計画に基づいて定期的に行われるケースです。一方で、診療報酬上は緊急の歯科訪問診療も想定されており、緊急・夜間・深夜の訪問するというケースもあります。
つまり、「歯科の訪問診療は予約した定期訪問しかできない」という制度ではありません。急に歯が痛くなった、入れ歯が割れて食事ができない、といった状況でも相談できる場合があります。
なお、この記事で触れる診療報酬の内容は、令和8年度歯科診療報酬点数表に基づいています。
▼当日・夜間対応できるかは歯科医院によって異なる
制度上は緊急の訪問が想定されていても、すべての歯科医院が当日・夜間・休日の訪問に対応しているわけではありません。次の点は医院ごとに大きく異なります。
- ✓当日対応の可否
- ✓翌日対応の可否
- ✓夜間対応の可否
- ✓休日対応の可否
- ✓対応できるエリア
急な症状がある場合は、まず電話で確認するのが確実です。
関西訪問歯科センターでは、歯の痛みや入れ歯の破損など急なトラブルについて、可能な限り当日、もしくは翌日中の対応を行っています。お電話の際は、いつから、どこが、どのように痛むのかを伝えていただけると、優先度の判断がしやすくなります。
通院と歯科訪問診療は何が違う?
訪問診療を検討する際、外来と比べて何がどのように変わるのかを整理しておくと判断しやすくなります。
| 比較項目 | 通院(外来) | 歯科訪問診療 |
|---|---|---|
| 診療場所 | 歯科医院 | 自宅・施設など |
| 設備 | 院内の設備を使用 | 訪問用の機器などを使用 |
| 治療 | 幅広い治療に対応 | 訪問先の環境や患者の状態によって制限あり |
| 費用 | 通常の歯科治療費 | 治療費に加えて歯科訪問診療に関する費用等が発生 |
| 対象 | 原則誰でも受診可能 | 通院が困難な方 |
▼診療する場所・設備の違い
外来では、据え置き型の歯科ユニットや院内のレントゲン設備を使って治療します。訪問診療では、ポータブルの歯科用機器を持ち込んで診療を行います。
持参するのは、歯を削るためのポータブルユニット、吸引器、ポータブルのレントゲン装置などです。訪問先でレントゲン撮影ができるため、「撮影のために歯科医院へ行く」という手間は不要です。
治療時の姿勢も違います。外来では歯科用チェアに座りますが、訪問診療では、普段使っているベッドや車椅子の上で治療します。患者さんの状態に合わせて、無理のない姿勢のまま進めます。体を無理に起こさなくてよい分、負担が小さくなる方もいます。
訪問診療は相談や応急処置だけの簡易なものではなく、必要な機器を持ち込んで行う歯科診療です。
▼受けられる治療の違い
訪問診療でも、患者さんの状態や訪問先の環境に応じて次の治療に対応できます。
- ✓虫歯の治療
- ✓歯周病の治療
- ✓入れ歯の作製、調整、修理
- ✓歯石除去
- ✓抜歯
- ✓レントゲン撮影
- ✓口腔ケアと継続的な口腔管理
一方で、訪問先では行えない治療もあります。
- ✓全身麻酔が必要な処置
- ✓大規模な外科手術
- ✓入院管理が必要な治療
- ✓高度な設備を必要とする治療
これらが必要な場合は、歯科医院や病院での治療をご提案します。
なお、関西訪問歯科センターでは、摂食・嚥下機能そのものへの対応や嚥下内視鏡検査は行っていません。飲み込みの機能について詳しく調べたい場合は、対応している医療機関へご相談ください。
▼費用の違い
訪問診療では、通常の治療費に加えて歯科訪問診療に関する費用が発生します。ここが外来との大きな違いです。
さらに、要介護・要支援認定を受けている方が自宅などで療養上の管理・指導を受ける場合には、介護保険による居宅療養管理指導費が加わることがあります。
金額は、訪問先や治療内容、負担割合のほか、同じ建物で同じ日に診療を受ける人数によっても変わります。この記事では仕組みの説明にとどめますので、具体的な自己負担額の目安は訪問歯科の費用を解説した記事をご覧ください。
なお、交通費や出張費の取り扱いは医院によって異なります。関西訪問歯科センターでは、交通費・出張費はいただいていません。
▼訪問診療ならではの特徴
訪問診療には、外来にはない利点があります。患者さんが実際に生活している環境を見ながら診療と指導ができる点です。
- ✓普段使っているベッドや車椅子での、無理のない口腔ケアの方法
- ✓ご家族や介護者の方へのブラッシング、入れ歯管理の指導
- ✓普段の食事内容や食事環境を踏まえた口腔管理
- ✓生活リズムに合わせたケア方法の提案
訪問の特徴は、指導の内容そのものよりも、患者さんが実際に生活している場を見たうえで話せる点にあります。使っている歯ブラシ、入れ歯を置いている場所、介護される方が実際に磨いているときの手の動きを、その場で確認しながら調整できます。外来では聞き取りに頼るしかない部分を、直接見て判断できるということです。
ただし、訪問診療が外来より優れているという単純な話ではありません。設備の整った環境で幅広い治療を受けられる外来と、生活の場で継続的に管理できる訪問診療では、適した状況が異なります。
通院と訪問診療のどちらが適しているか判断がつかない場合は、現在の身体状況と通院の状況をお伝えのうえご相談ください。
通院が難しくなったら、いつ訪問診療に切り替える?
「そろそろ通院が限界かもしれない」と感じたとき、いつ相談すればよいのかは判断に迷いやすい点です。
▼訪問診療の対象は通院が困難な方
歯科訪問診療は、疾病や傷病などによって歯科医院への通院が困難な方を対象としています。具体的には次のような変化が目安になります。
- ✓寝たきりの状態になった
- ✓車椅子での外出が難しくなった
- ✓身体的な疾患や障がいによって移動が難しくなった
- ✓認知症などにより、外来での診療が難しくなった
- ✓通院に大きな身体的負担が生じるようになった
一方で、「まだ通院できるけれど、早めに訪問診療へ切り替えておこう」という使い方はできません。あくまで通院が困難になった段階で相談する制度です。
対象になるかどうかは、要介護度だけで形式的に決まるものではありません。最終的には、患者さんの状態を踏まえて歯科医師が個別に判断します。判断に迷いやすいケースについては、訪問歯科の対象者を解説した記事で詳しく整理しています。
なお、ご家族の送迎があれば通院できる場合は、関西訪問歯科センターでは原則として通院をご案内しています。送迎が難しい場合にご訪問する運用です。また、骨折や術後などで一時的に通院が難しい方も対象となり、通院できる状態まで回復された場合は外来通院へ切り替えていただけます。
▼外来から訪問診療へ移行する場合
通院できるうちからかかりつけの歯科医院を持っておくと、将来の相談がしやすくなります。
- ✓これまでの治療歴
- ✓口腔内の状態
- ✓入れ歯の状態
- ✓服薬や全身状態
これらを把握している歯科医院であれば、通院が難しくなった段階での相談もスムーズです。診療報酬上も、外来から訪問診療へ移行する場合を評価する歯科訪問診療移行加算という仕組みがあります。
ただし、この加算の存在は「今すぐ訪問診療へ切り替えるべき」という理由にはなりません。通院できるうちは通院を続け、難しくなったときに相談する。この順序で問題ありません。
歯科の往診・訪問診療を依頼する方法
▼ケアマネジャーなどを通して相談する
すでに介護サービスや医療サービスを利用している場合は、担当者へ相談する方法があります。
- ✓ケアマネジャー
- ✓地域包括支援センター
- ✓主治医
- ✓病院の医療ソーシャルワーカー
担当者は地域の医療・介護資源を把握しているため、対応可能な医院につながりやすくなります。入院中であれば、退院前に医療ソーシャルワーカーへ相談しておくと、退院後の流れが途切れません。
▼訪問診療を行う歯科医院へ直接相談する
訪問診療を行っている歯科医院へ、直接相談することもできます。関西訪問歯科センターでは、患者さんやご家族からのご相談を直接受け付けています。受付後、当センターから担当のケアマネジャーへ連絡しますので、ご家族が調整役を担う必要はありません。
問い合わせの際は、次の内容をお伝えください。
- ✓患者さんの住所(訪問先)
- ✓現在困っている症状
- ✓通院が難しい理由
- ✓全身状態や服薬の状況
- ✓要介護度
- ✓希望する訪問日時
- ✓緊急性の有無
保険診療として訪問できる範囲には、原則として「医療機関から16km以内」という基準があります。まずは住所を伝えて、対応可能なエリアかどうかを確認するところから始めてください。
歯科の往診・訪問診療についてよくある質問
Q.歯科の往診と訪問診療は何が違いますか?
A.一般的には、往診は患者さんの要望に応じた臨時の訪問、訪問診療は計画に基づく継続的な訪問を指します。ただし歯科の診療報酬には「往診料」という独立した区分がなく、どちらも歯科訪問診療料として扱われます。呼び方の違いで受けられる診療内容が変わることはありません。
Q.歯医者に往診をお願いすることはできますか?
A.訪問診療を行っている歯科医院へ相談できます。実際に対応できるかどうかは、患者さんが訪問診療の対象となるか、訪問エリア内か、医院の診療体制がどうかによって異なります。まずは住所と症状を伝えて確認してください。
Q.急に歯が痛くなった場合は当日来てもらえますか?
A.医院の診療体制、予約状況、訪問エリアによって異なるため、まず電話で確認してください。関西訪問歯科センターでは、可能な限り当日、もしくは翌日中の対応を行っています。
Q.訪問診療は通院より費用が高くなりますか?
A.訪問診療では通常の治療費に加えて歯科訪問診療に関する費用が発生するため、費用の仕組みが外来とは異なります。ただし、実際の総額は治療内容や負担割合によって変わります。具体的な目安は、訪問歯科の費用を解説した記事をご覧ください。
Q.自宅でも入れ歯を作ってもらえますか?
A.作製可能です。関西訪問歯科センターには技工士が在籍しており、ご自宅で型取りをした模型をスキャンし、CAD/CAMで入れ歯を製作しています。新しい入れ歯の作製は完成までおおよそ1か月、修理は当日中に対応できる場合があります。
Q.まだ通院できる場合でも訪問診療を利用できますか?
A.歯科訪問診療は、疾病や傷病などによって通院が困難な方を対象としています。自宅で診療を受けたいという理由だけでは、原則として対象になりません。対象となるかどうかは、患者さんの状態を踏まえて歯科医師が判断します。
まとめ
歯科の往診と訪問診療について、押さえておきたい点を整理します。
- ✓歯医者に往診を頼むことはでき、歯科では歯科訪問診療という枠組みで扱われる
- ✓急な歯の痛みや入れ歯の破損も相談でき、当日・夜間対応の可否は医院によって異なる
- ✓訪問診療でも虫歯・歯周病・入れ歯・抜歯・レントゲン撮影など幅広く対応できる
- ✓歯科訪問診療の対象は、疾病や傷病などによって通院が困難な方
- ✓通院が難しくなった段階で、かかりつけ歯科や訪問診療を行う歯科医院へ相談する
言葉の使い分けに迷って相談が遅れると、その分だけ痛みや不便が続きます。呼び方はどちらでも構いませんので、困っている状態をそのままお伝えください。
関西訪問歯科センターでは、大阪府・兵庫県・奈良県の広い範囲で訪問診療を行っています。まずは対応エリアをご確認のうえ、お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。