Columnコラム
誤嚥性肺炎の治療の流れと回復の見込み
家族が誤嚥性肺炎と診断され、入院することになった。この先どうなるのか、どのくらいで退院できるのか、元の生活に戻れるのか。説明を聞いても、その場では整理しきれないことがあります。
この記事では、誤嚥性肺炎の一般的な治療の流れ、入院期間が人によって異なる理由、回復を考えるときに分けて見ておきたいことを整理します。あわせて、主治医に何を尋ねればよいかもまとめました。
以下は一般的な情報です。個別の治療方針や回復の見通しについては、必ず主治医にご確認ください。
誤嚥性肺炎の治療は状態を確認して進める
誤嚥性肺炎の治療は、全員が同じ順番、同じ内容で進むものではありません。肺炎の程度、全身の状態、持病の有無などによって、必要な対応が変わります。診断と治療を行うのは医科の医療機関です。
▼診察と検査で肺炎や全身状態を確認する
まず、症状や診察の所見に加えて、検査の結果をあわせて状態を確認します。肺の状態を調べる画像検査、血液検査、酸素の状態を調べる検査などが行われます。
検査の結果をどう解釈するか、入院が必要かどうかは、複数の要素を踏まえて医師が判断します。数値のひとつを取り出して、家族が良い悪いを判断できるものではありません。気になる項目があれば、その意味を主治医に尋ねてください。
▼抗菌薬などで肺炎を治療する
細菌による感染に対しては、抗菌薬による治療が行われます。抗生剤や抗生物質と呼ばれることもありますが、この記事では抗菌薬と表記します。
どの薬を使うか、点滴で投与するか内服にするか、どのくらいの期間続けるかは、病状や全身の状態、これまでの治療の経過などをもとに医師が判断します。
自己判断で服用を中止したり、量を変えたりすることは避けてください。副作用が気になる場合や、飲みにくさがある場合は、その旨を主治医や薬剤師へ伝えて相談してください。
▼呼吸や栄養など必要な全身管理を行う
肺炎そのものへの治療とあわせて、全身の状態を支える対応が必要になることがあります。
呼吸の状態によっては酸素の投与が行われます。食事が取れない状態が続く場合は、水分や栄養をどう補うかの検討が必要になります。こうした対応が必要な場合は入院になることが多く、状態に応じて内容が変わります。
具体的にどのような処置や栄養の方法をとるかは、医師や看護師、管理栄養士などの医療チームと相談しながら決めていくことになります。
▼口腔ケアや嚥下への支援を並行して検討する
治療と並行して、口の中を清潔に保つケアや、飲み込みの状態への支援が検討されることがあります。
ここで区別しておきたいのは、この2つが別の役割だという点です。口腔ケアは口の中の状態を整えるもの、飲み込みへの支援は嚥下機能を評価し必要な訓練を行うものです。
また、これらは肺炎そのものの治療に置き換わるものではありません。医師、看護師、歯科、リハビリの専門職などが関わる中で、それぞれの役割として行われるものです。歯科の口腔ケアによって肺炎が治るというものではありません。
入院期間が人によって異なる理由
入院がどのくらいになるかは、あらかじめ決まっているものではありません。平均の日数を挙げても、目の前の状況に当てはまるとは限らないため、期間が変わる理由のほうを知っておくほうが役に立ちます。
▼肺炎の経過と全身状態によって変わる
入院の長さに関わるのは、次のような要素です。
- ✓肺炎そのものの程度と、治療への反応
- ✓持病の有無と、その状態
- ✓入院前の生活の状態
- ✓食事が取れる状態まで戻っているか
- ✓退院後に受けられる支援の体制
年齢だけで日数が決まるものではありません。また、入院が長くなったことが治療の失敗を意味するわけでもありません。
見通しが気になる場合は、いまの治療で何を目標にしているのか、次にどのタイミングで状態を評価するのかを主治医に尋ねてみてください。現時点の目標と次の判断時点がわかると、状況を追いやすくなります。
▼退院に向けて確認したいこと
退院が視野に入ってきたら、自宅や施設に戻った後のことを医療チームへ確認しておいてください。
- ✓退院後に必要な支援と、その手配
- ✓受診の予定と、服薬の内容
- ✓食事の内容や介助で気をつけること
- ✓口の中のケアをどう行うか
- ✓体調が変化したときの連絡先
退院できるかどうかの判断は、医療チームが状態を見て行うものです。家族の側でチェック項目を作って判断するものではありません。
治療後の回復を考えるときのポイント
回復について考えるときは、肺炎が改善したかどうかと、元の生活の状態に戻れるかどうかを分けて見ておくと整理しやすくなります。
▼肺炎の改善と生活機能の回復は別に考える
抗菌薬による治療で肺炎の感染が改善しても、それがそのまま元の生活に戻れることを意味するわけではありません。
入院中は体を動かす機会が減るため、体力や筋力が落ちることがあります。食べる、歩く、身の回りのことを行うといった状態が、入院前と同じところまで戻るかどうかは、それぞれ別に見ていく必要があります。
どのくらいで戻るかについて、一般的な情報から個人の回復時期を推定することはできません。実際の経過を見ながら、そのつど確認していくことになります。
▼飲み込みの問題が残ると再発に注意が必要
肺炎が改善しても、誤嚥しやすい状態が残っている場合があります。その場合、再発する可能性を踏まえた対応が必要になります。
ここで大切なのは、再発を家族のケア不足のせいと考えないことです。誤嚥のしやすさは体の機能の状態によるもので、注意していれば必ず防げるという性質のものではありません。
退院後にどのような支援が必要かは、飲み込みの状態を評価したうえで判断されます。主治医や、飲み込みを扱う専門職へご相談ください。予防に向けた考え方については、予防についてまとめた記事で整理しています。
▼治療中や退院後に口腔ケアが担う役割
治療中も退院後も、口の中の状態を整えることは支援のひとつとして行われます。
口の中が清潔に保たれていない状態が続くと、細菌の量が多くなります。気道に入る細菌を減らすという意味で、口腔ケアには役割があります。
ただし、口腔ケアが抗菌薬による治療の代わりになるものではありません。また、口腔ケアを行えば回復が早まる、生存期間が延びるといった効果を確実に得られるものでもありません。あくまで、複数ある支援のひとつという位置づけです。
退院後、どのようにケアを続けるかは、本人の状態によって変わります。歯や入れ歯の状態、口の中の清掃方法については歯科にご相談ください。
予後や見通しを主治医に相談するときに大切なこと
この先どうなるのかを知りたい、あとどのくらいなのかを考えてしまう。そうした気持ちになることは自然なことです。
ただし、病名や一般的な統計から、目の前の一人の見通しを判断することはできません。同じ診断名でも、状態も経過も人によって大きく異なるためです。知りたい気持ちがあるからこそ、主治医と直接、いまの状態について話をしていくことになります。
▼今の状態と今後の見通しを分けて尋ねる
主治医に尋ねるときは、いまの状態と、これから想定されることを分けて聞くと整理しやすくなります。
| 確認したいこと | 質問の例 |
|---|---|
| 現在の状態 | 改善している点と、まだ心配な点は何ですか |
| 入院と退院 | 退院に向けて、次に確認することは何ですか |
| 食事と生活 | 家族が行う食事の介助や口腔ケアで気をつけることを教えてください |
| 今後の見通し | いま想定される経過と、次に説明を受けられる時期を教えてください |
見通しは、その後の経過によって変わることがあります。一度聞いた内容がそのまま確定するわけではないため、状況が変わったときには改めて確認してください。
▼本人の希望と家族の不安を共有する
医療者に伝えておきたいのは、状態のことだけではありません。
本人がどのような生活を望んでいるか、何を大切にしたいか、家族としてどこに負担を感じているか。こうしたことを共有しておくと、方針を検討するうえでの材料になります。
積極的に治療を続けることと、負担を減らすことのどちらが正しいかは、状況や本人の希望によって異なります。この記事でどちらがよいかを示すことはしません。医療チームと話しながら決めていくことになります。
なお、相談したからといって、必ず明確な期間や結論が示されるとは限りません。それでも、いまの状態と考え方を共有しておくことには意味があります。
よくある質問
Q.抗菌薬を使えば飲み込みの問題も改善しますか?
A.抗菌薬は肺炎の感染に対する治療です。飲み込みの機能そのものに働くものではありません。飲み込みの状態については、別に評価を受け、必要な支援を相談することになります。
Q.誤嚥性肺炎は治っても繰り返すことがありますか?
A.誤嚥しやすい状態が残っている場合、再発することがあります。飲み込みの状態への対応、口の中のケア、栄養状態の管理など、複数の取り組みを状態に合わせて続けていくことになります。詳しくは予防についてまとめた記事をご覧ください。
Q.退院後の口腔ケアは訪問歯科に相談できますか?
A.ご相談いただけますが、病状と通院の状況、医院が対応している範囲を確認する必要があります。たんぽぽ歯科訪問センターでは、摂食・嚥下機能への対応と嚥下内視鏡検査は行っていません。飲み込みに関するご相談は主治医やケアマネジャーへお願いします。
まとめ
誤嚥性肺炎の治療は、状態を確認しながら抗菌薬による治療と全身の管理を進めるもので、内容も期間も人によって異なります。肺炎が改善することと、元の生活の状態に戻ることは分けて考える必要があります。
個別の治療方針や見通しについては主治医にご確認ください。退院後など、通院が難しい方の歯や入れ歯、口腔ケアについてはご相談ください。