Columnコラム
誤嚥性肺炎の症状とサイン日々の観察ポイント一覧
家族の様子がいつもと違う気がするけれど、これが受診すべき変化なのか判断がつかない。介護をしていると、こうした場面に何度も出会います。
この記事は、家族が誤嚥性肺炎かどうかを見分けるためのものではありません。いつもと違う変化に気づき、それを医療者へ正確に伝えられるようにするための記事です。日々の観察に使えるチェック項目もまとめました。
なお、急に息苦しそうになった、呼びかけへの返事がない、意識の様子がおかしいといった場合は、記録より先に119番へ通報してください。
誤嚥性肺炎でみられる主な症状

誤嚥性肺炎では、次のような症状がみられることがあります。
- ✓発熱
- ✓咳が続く、咳が増える
- ✓痰が増える、痰が出しにくい
- ✓息苦しそうな様子、呼吸が速い
- ✓食欲の低下
- ✓元気がない、ぼんやりしている
ただし、これらはいずれも誤嚥性肺炎に限って起こる症状ではありません。他の感染症や別の病気でも同じような症状が出ます。症状の組み合わせだけで、誤嚥性肺炎かどうかを判断することはできません。
誤嚥性肺炎は、細菌を含む唾液や食べ物などが気道から肺に入り、肺で感染を起こす病気です。発症の仕組みについては、原因とメカニズムをまとめた記事で説明しています。
症状が気になるときの受診と救急相談

観察や記録より先に確認していただきたいのが、どういうときに医療機関へ連絡するかです。記録をそろえてから相談しようとして、受診が遅れることのないようにしてください。
▼急な呼吸困難や意識の異常がある場合
次のような様子が見られる場合は、119番へ通報してください。
- ✓急に息切れがする、呼吸が苦しそうにしている
- ✓呼びかけても返事がない
- ✓意識の様子がいつもとおかしい
- ✓顔色が急に悪くなった
これが誤嚥性肺炎によるものかどうかを、ご本人やご家族が判断する必要はありません。急な変化があれば、原因がわからないまま連絡していただいて構いません。
▼普段と違う症状がある場合
緊急性は高くないものの、いつもと違う様子が続いている場合は、かかりつけ医や医科の医療機関へご相談ください。
- ✓新たに熱が出た
- ✓咳や痰が増えた
- ✓食事量が減った
- ✓元気がない状態が続いている
判断に迷う場合は、お住まいの地域の救急相談窓口を利用する方法もあります。窓口によって対応している地域や時間帯が異なりますので、事前に確認しておくと安心です。
なお、歯科での急患対応と、肺炎が疑われる場合の相談先は別です。体調の変化については医科の医療機関へご相談ください。
高齢者では典型的な症状が目立たないことがある
高齢の方の場合、教科書的な症状がはっきり現れないことがあります。高い熱が出ない、強い咳が出ないという状態でも、肺炎が起きていることがあります。
そのため、次のような普段との差に目を向けることが手がかりになります。
- ✓元気がない、横になっている時間が増えた
- ✓食欲が落ちた、食事に時間がかかるようになった
- ✓ぼんやりしている、受け答えがいつもと違う
- ✓日中うとうとしていることが増えた
- ✓会話や動作の反応が鈍い
これらはいずれも、はっきりした症状というより、普段を知っている人だからこそ気づける変化です。
一方で、こうした変化がひとつ見られたからといって肺炎と決まるわけでもありません。別の体調不良や、疲れ、環境の変化によることもあります。決めつけずに、いつからどう変わったかを医療者に伝えることが役に立ちます。
むせない誤嚥にも注意する
食事のときにむせていないから誤嚥していない、とは限りません。
誤嚥が起きても、むせや咳といった反応がはっきり現れないことがあります。これを不顕性誤嚥といいます。反応が出ないぶん、周囲が気づきにくいという特徴があります。
むせは、飲み込みの状態を知るうえでの手がかりのひとつです。ただし、むせの有無は肺炎の診断とは別のものです。むせているから肺炎、むせていないから肺炎ではない、という関係にはありません。
なお、誤嚥するかどうかを確かめるために、ご家庭で水を飲ませて様子を見るといったことは行わないでください。飲み込みについて不安がある場合は、主治医や医科の医療機関へご相談ください。
不顕性誤嚥については、不顕性誤嚥についてまとめた記事で詳しく説明しています。
日々の変化を記録する観察チェックリスト
ここからは、日々の様子を記録するための項目を紹介します。これは診断のための表ではなく、医療者に状況を伝えるためのメモです。
記録するときのポイントは、その日の状態だけでなく、普段と比べてどう違うかを書き添えることです。「37.4度」だけでは判断材料になりにくいものの、「普段は36度台なのに37.4度」であれば意味を持ちます。
▼食事中や食後の様子
食事は、変化に気づきやすい場面です。
- ✓むせや咳が出たか、それは何を食べたときか
- ✓飲み込むまでに時間がかかっていないか
- ✓食事量はいつもと比べてどうか
- ✓食後に声がかすれる、ごろごろした感じがないか
- ✓特定のものを避けるようになっていないか
危険かどうかを確かめるために、無理に食べさせて様子を見ることは避けてください。
▼体温と測った時刻
体温は、測った値だけでなく、いつ測ったかもあわせて記録してください。時間帯によって変動があるためです。
普段の平熱がどのくらいかがわかっていると、比較しやすくなります。何度以下なら受診しなくてよいといった線引きはありません。普段との差が気になるようであれば、その旨を含めて相談してください。
▼咳や呼吸の変化
咳の回数が増えていないか、夜間に咳き込んでいないか、呼吸が速くなっていないか、肩で息をしているような様子はないかを見てください。
ただし、急に呼吸が苦しそうになった場合は、記録を続けるより先に救急への連絡を優先してください。
▼痰の状態
痰の量が増えていないか、出しにくそうにしていないか、色に変化がないかを記録します。
痰の色から、細菌による感染かどうかや、抗菌薬が必要かどうかを判断することはできません。変化があったという事実を記録し、医療者へ伝えてください。
▼元気や反応などの全身状態
食欲、日中の活動量、受け答えの様子など、全体的な調子を記録します。
介護をしていても、一日中そばにいて全ての変化を把握することはできません。気づいたときに、その時刻とあわせてメモを残すという形で十分です。「昨日の夕方から食事量が減っている」といった記録が、医療者にとって有用な情報になります。
以下の形式で記録しておくと、そのまま医療機関へ持参できます。
| 項目 | 記録する変化 | 記録欄 |
|---|---|---|
| 食事 | むせ、食べにくさ、食事量 | 日時/気づいたこと |
| 体温 | 実測値、普段との差 | 日時/体温 |
| 咳と呼吸 | 増減、息苦しそうな様子 | 日時/気づいたこと |
| 痰 | 量、色、出しにくさ | 日時/気づいたこと |
| 全身状態 | 元気、食欲、受け答え | 日時/気づいたこと |
この表は診断のためのものではありません。急な呼吸困難や意識の異常があるときは、記録より救急対応を優先してください。
医療機関へ相談するときに伝えたいこと
受診や電話相談のときは、次のことを分かる範囲で伝えてください。
- ✓いつから、どんな変化があったか
- ✓その変化は食事と関係がありそうか
- ✓測った体温と時刻
- ✓持病と、服用している薬
- ✓過去に誤嚥性肺炎と診断されたことがあるか
すべてがそろっていなくても構いません。記録が不十分だからと相談を先延ばしにせず、気づいた範囲で伝えてください。
よくある質問
Q.熱がなくても誤嚥性肺炎のことがありますか?
A.あります。高齢の方では、高い熱や強い咳といった典型的な症状が目立たないことがあります。熱がないことを安心の材料とせず、元気のなさや食欲の低下など、普段との違いが気になる場合は医科の医療機関へご相談ください。
Q.むせないなら安心して食事を続けてよいですか?
A.むせの有無だけで安全かどうかを判断することはできません。むせや咳といった反応が現れにくい場合もあります。飲み込みに不安がある場合は、主治医や医科の医療機関へご相談ください。
Q.チェック項目が一つでもあれば肺炎ですか?
A.この記事のチェック項目は、診断のためのものではありません。該当した数で判断できるものでもありません。気になる変化があれば、その内容を医療機関へ伝えて評価を受けてください。
まとめ
誤嚥性肺炎では発熱や咳、痰などがみられますが、高齢の方では元気のなさや食欲の低下といった変化のほうが先に現れることがあります。むせの有無だけで判断することもできません。
大切なのは、いつもと違う変化に気づき、それを医療者へ伝えることです。急な呼吸困難や意識の異常があるときは119番、それ以外で気になる変化があるときはかかりつけ医や医科の医療機関へご相談ください。
状態が落ち着いた後の口の中のケアについては、口腔ケアについてまとめた記事で説明しています。