Columnコラム
誤嚥性肺炎の予防法口腔ケア・食事・嚥下体操の考え方
誤嚥性肺炎を防ぐために何かしたいけれど、口腔ケア、食事の工夫、体操と情報が多く、どれをどこまでやればよいのか迷うことがあります。
こうした取り組みはいずれも予防に関わるものですが、本人の状態によって必要な内容も方法も変わります。誰にでも同じやり方が当てはまるものではありません。
この記事では、3つの取り組みそれぞれで何ができるのか、そして専門家に何を確認すればよいのかを整理します。新しい手順を増やすことより、いま行っているケアが本人に合っているかを確認するところから始められる内容にしています。
誤嚥性肺炎の予防で押さえたいこと
予防に向けた取り組みは、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 取り組み | 目的 | 相談して確認すること |
|---|---|---|
| 口腔ケア | 口の中を清潔に保ち、状態を維持する | 本人に合う清掃方法、介助の仕方 |
| 食事の調整 | 食べやすさと、必要な栄養への配慮 | 食べ物の形、とろみ、食事の姿勢 |
| 嚥下機能への支援 | 状態に応じた評価や訓練 | 体操などが適しているか、その方法 |
このほか、栄養状態や持病の管理といった全身の状態も関わります。ひとつの取り組みだけで完結するものではなく、複数の要素が重なっています。
また、これらを行えば誤嚥性肺炎を完全に防げると言えるものではありません。できることを組み合わせ、本人の状態に合わせて調整していくという考え方になります。
口腔ケアでできること
口の中を清潔に保つことは、気道に入る細菌の量を減らすという意味があります。ここでは一般的なケアの内容と、歯科に相談したいことを整理します。具体的な手技については、口腔ケアについてまとめた記事で説明しています。
▼歯と歯の間の清掃
歯と歯の間や、歯と歯ぐきの境目には汚れが残りやすく、歯ブラシだけでは落としきれないことがあります。歯間ブラシやデンタルフロスといった清掃用具を併用する方法があります。
ただし、どの道具が使いやすいか、どこまで介助が必要かは、本人の状態によって異なります。口を開けていられる時間、手の動かしやすさ、歯や歯ぐきの状態によって、適した方法は変わります。歯科で実際に見てもらったうえで相談してください。
毎食後に必ず行わなければならないというものでもありません。介護をしている状況によっては、それが難しいこともあります。できる範囲で続けられる形を、専門家と一緒に決めていくほうが現実的です。
▼舌や粘膜など口の中の状態の確認
汚れがつくのは歯だけではありません。舌の表面や、頬の内側、上あごの粘膜にも汚れが残ることがあります。口の中が乾いていると、汚れが張りついて取れにくくなります。
気になる状態があれば、どうケアすればよいかを歯科に相談してください。舌を強くこすると粘膜を傷つけることがあるため、自己流で力を入れて磨くことは避けてください。
唾液腺のマッサージなどが紹介されていることもありますが、誰にでも同じ効果があるというものではありません。行う場合は、方法を含めて専門家に確認してください。
▼入れ歯の清掃と状態の確認
入れ歯を使っている場合は、入れ歯自体の清掃も必要です。取り外して汚れを落とし、あわせて入れ歯を外した状態の口の中もケアします。
洗浄剤を使う場合は、使っている入れ歯の材質に合うものかどうか、浸けておく時間はどのくらいかを確認してください。製品によって使い方が異なります。
清掃とあわせて、入れ歯が合っているか、割れやひびがないかも見ておいてください。合わない入れ歯を使い続けると、歯ぐきを傷つけたり、食べにくさにつながったりします。気になる点があれば歯科へご相談ください。
▼定期的な歯科での確認
口の中の状態は変化します。定期的に歯科で確認することで、歯や入れ歯の状態だけでなく、いま行っているケアの方法が合っているかも見直せます。
どのくらいの間隔で確認するかは、口の中の状態や全身の状態によって変わります。全員に同じ頻度が当てはまるものではないため、担当の歯科医師と相談して決めてください。
食事の工夫は飲み込みの状態に合わせる
食事の調整は、飲み込みやすさだけを基準に決めるものではありません。調整した結果として食べる量が減ってしまえば、栄養状態に影響します。本人が食べたいものという観点も含めて、専門家と相談しながら決めていくことになります。
▼食品の形やとろみを専門家と確認する
噛む力や飲み込む力の状態に応じて、食べ物の形を調整する方法があります。細かく刻む、やわらかく調理する、水分にとろみをつけるといった方法です。
注意したいのは、とろみは濃いほど安全というわけではないという点です。濃すぎると、かえって飲み込みにくくなったり、口の中に残ったりすることがあります。また、すべての方にとろみが必要というものでもありません。
どのくらいの調整が本人に合っているかは、飲み込みの状態を評価したうえで判断されるものです。自己流で濃度や形を決めず、主治医や、飲み込みを扱う専門職に相談してください。
▼食事の姿勢や介助方法を確認する
食事のときの姿勢も、飲み込みやすさに関わります。ただし、これも一律の角度や顎の位置を決められるものではありません。
座った姿勢を保てるか、体をどこまで起こせるか、麻痺の有無やその左右差、いつもどのように食べているかによって、適した姿勢は変わります。介助する側の位置や、一口の量、食べるペースについても同じです。
現在の食べ方に不安がある場合は、実際の様子を見てもらったうえで助言を受けてください。
▼食べる量や水分の取り方も共有する
食事の内容を調整した後は、その結果どうなったかを医療者へ伝えてください。
- ✓調整前と比べて食べる量が減っていないか
- ✓水分を十分に取れているか
- ✓食べにくそうにしている様子はないか
- ✓食事にかかる時間が長くなっていないか
食事中のむせや、その他の変化については、症状と観察ポイントをまとめた記事で整理しています。食事を止めるか続けるかといった判断は、記事の内容だけで決めず、医療者に相談してください。
嚥下体操は自分に合う方法を専門家に確認する
口や舌を動かす体操などが、飲み込みの支援として用いられることがあります。ただし、誰にでも同じ効果があるものではなく、状態によっては適さない場合もあります。
▼体操を始める前に確認したいこと
体操を取り入れたいと考えている場合は、まず次のことを主治医などへ伝えて相談してください。
- ✓現在の病状と、治療中の内容
- ✓口やのどに痛みがないか
- ✓動かしにくい部分があるか
- ✓食事のときに困っていること
そのうえで、そもそも訓練が必要な状態なのか、必要であればどのような方法が適しているかを確認します。
▼教わった方法を継続して見直す
回数を増やせば効果が上がる、強く行ったほうがよいというものではありません。教わった方法を、教わった範囲で続けることが基本です。
行っていて違和感がある、疲れる、痛みが出るという場合は、無理に続けず指導を受けた方に確認してください。状態が変われば、適した方法も変わります。
なお、たんぽぽ歯科訪問センターでは摂食・嚥下機能への対応は行っていないため、当センターで嚥下訓練を受けていただくことはできません。嚥下体操については、嚥下体操についてまとめた記事もあわせてご覧ください。
禁煙やワクチンなど全身の健康管理も相談する
予防を考えるうえでは、口や食事以外の要素も関わります。
喫煙は気道や肺の状態に影響します。禁煙について相談したい場合は、主治医や医科の医療機関へご相談ください。糖尿病などの持病がある場合、その管理の状況も全身の状態に関わります。
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンについて相談されることもあります。ここで整理しておきたいのは、これらのワクチンは特定の病原体による感染への対策であり、誤嚥そのものを防ぐものではないという点です。
接種が適しているかどうか、いつ受けるかについては、持病や現在の状態を踏まえた判断が必要です。主治医にご相談ください。
セルフケアだけで不安なときの相談先
相談先は、内容によって分かれます。
- ✓歯や入れ歯の状態、口の中の清掃方法:歯科
- ✓飲み込みの評価や訓練、食事の形の調整:主治医や、飲み込みを扱う専門職
- ✓持病の管理、禁煙、ワクチン:主治医や医科の医療機関
たんぽぽ歯科訪問センターでは、摂食・嚥下機能への対応と嚥下内視鏡検査は行っていません。飲み込みに関するご相談は、主治医やケアマネジャーへお願いします。
通院が難しい方の歯や入れ歯、口腔ケアについてご相談ください。ご本人やご家族から直接お申し込みいただけます。訪問の対象になるかどうかは、通院の状況を確認したうえで判断します。
よくある質問
Q.口腔ケアだけで誤嚥性肺炎を防げますか?
A.口腔ケアは予防に関わる取り組みのひとつですが、それだけで確実に防げるとはいえません。飲み込みの状態への対応、食事の調整、栄養や全身の状態の管理など、複数の要素が関わります。
Q.とろみは全員に必要ですか?
A.必要かどうかは、飲み込みの状態によって異なります。全員に必要というものではなく、濃ければよいというものでもありません。方法については主治医や飲み込みを扱う専門職に確認してください。
Q.訪問歯科で嚥下体操を教わることはできますか?
A.提供している内容は医療機関によって異なります。たんぽぽ歯科訪問センターでは摂食・嚥下機能への対応を行っていないため、嚥下体操の指導は行っていません。相談先については主治医やケアマネジャーへご確認ください。
まとめ
誤嚥性肺炎の予防には、口腔ケア、食事の調整、飲み込みへの支援といった複数の取り組みが関わります。いずれも本人の状態によって適した方法が変わるため、一律の手順として決められるものではありません。
新しい方法を自己流で増やすより、いま行っているケアが本人に合っているかを専門家と確認するところから始めてみてください。